公開:2022年3月16日
更新:2022年7月5日
チームで取り組むIBD診療の実態についてご紹介します。
公開:2022年3月16日
更新:2022年7月5日
(取材日時:2020年2月18日(火) 取材場所:札幌グランドホテル)
JA北海道厚生連 札幌厚生病院
副院長/IBDセンター長 本谷 聡 先生
外科 部長 山上 英樹 先生 *取材当時
(現:独立行政法人 国立病院機構 旭川医療センター 消化器外科部長)
小児科 部長 戸板 成昭 先生
薬剤部 山下 友輝 さん
放射線技術部門 係長 松本 和久 さん
看護部 臨床試験支援室主任 中野 まや子 さん
看護部 科長 奥村 文子 さん
栄養科 主任 須藤 綾子 さん
メディカルソーシャルワーカー 今野 雄太 さん
IBD治療は確実に進歩しているものの、治療は長期に及ぶため、様々なライフイベントや食事などの療養生活に対して不安を感じている患者さんは少なくありません。そのため、IBD診療には消化器内科や外科、小児科などの医師のほか、看護師、薬剤師、放射線技師、栄養科、メディカルソーシャルワーカーなどの様々な職種が連携し、患者さんに最適な医療を提供するとともに、患者さんの療養生活を支えることが大切です。第3回は、IBD診療に積極的に取り組んでいる札幌厚生病院の副院長でもあるIBDセンター長の本谷 聡先生にIBD診療における今後の展望についてお話をうかがいました。
JA北海道厚生連 札幌厚生病院
副院長/IBDセンター長 本谷 聡 先生
本谷先生
以前のIBD診療は、食事が極端に制限されて、使用する薬剤も限られていました。しかし私は、「なるべく食べてほしい」「検査の負担や薬の副作用を少しでも軽くしてあげたい」といった患者さんを一番に考えた診療を心がけてきました。最近では、管理栄養士の指導のもと「病勢に応じて、なるべく食べた方が良い」という考え方が定着していますし、カプセル内視鏡などの検査技術の進歩により患者さんの負担も軽くなっています。薬剤についても、新薬の開発や研究が進み、以前と比べて患者さんに合わせた薬剤を選択できるようになり、副作用の軽減を目指せるようになりました。
IBD診療は多岐にわたりますので、このような患者さんを一番に考えた診療は医師だけでは実現できず、それぞれのプロフェッショナルが集まったチーム医療によるきめ細かい治療や指導が必要だといえるでしょう。
IBDは療養生活が長期にわたるため、通院がなるべく負担にならないよう、症状が落ち着いたらご自宅から近い医療機関に通院する患者さんも多いと思います。患者さんが通院する医療機関が変わっても、患者さんが安心して療養生活を送れるように、地域の医師や放射線技師による勉強会を開催して、各医療機関のIBD治療のレベルアップを図り、地域でチーム医療ネットワークを構築することが大切です。今後もIBD患者さんに最適な治療を提供するために、院内や地域のチーム医療を構築してレベルアップを図り、その経験を若いスタッフに継承していきたいと思っています。
最近では、発症してから10年以上経過している潰瘍性大腸炎の患者さんは、同じ年代の健康成人に比べて大腸がんのリスクが高いことが知られています。患者さんには、大腸がんの早期発見、早期治療のためにも、定期検査は忘れずに受けていただきたいと思います。
近年、医師や看護師、薬剤師、放射線技師などのスタッフがチーム連携し、より質の高いIBD診療を提供できるようになりました。これからもIBD患者さんのことを第一に考え、IBD治療のレベルアップを図っていきます。今後は、この長い経験から得られた実績を若いスタッフに継承していくこと、世界に発信していくことが課題と考えています。
札幌厚生病院IBDセンターのスタッフの皆様