公開:2021年9月28日
更新:2022年7月5日

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IBDとは

炎症性腸疾患のことで、一般的には潰瘍性大腸炎とクローン病のことを指しています。

監修:藤田医科大学 消化器内科 講師 長坂 光夫 先生

公開:2021年9月28日
更新:2022年7月5日

監修:藤田医科大学 消化器内科
講師 長坂 光夫 先生

クローン病とは

クローン病

クローン病は、口腔から肛門まで、消化管のどの場所でも起こります。小腸や大腸を中心に慢性的な炎症が起き、びらん(局所的で浅い傷)や潰瘍(深くえぐれた傷)ができる病気です。多くの場合、下痢や腹痛、発熱、体重減少などを伴います。

クローン病の炎症は、一箇所だけではなく消化管内に断続的に発生し、粘膜の浅い層から消化管壁の深い層まで進行していきます。

炎症の発生部位は患者さんによってさまざまで、炎症が小腸のみに発生しているものを「小腸型」、小腸と大腸に発生しているものを「小腸大腸型」、大腸のみで発生しているものを「大腸型」、3つのどれにも当てはまらないものを「特殊型」と呼びます。

[参考]福島恒男 編集『IBDチーム医療ハンドブック 第2版』(2012年 文光堂)

クローン病は、同じ炎症性腸疾患(IBD)である潰瘍性大腸炎と同様に、国の指定難病の1つです。難病というと、不安に思われる方もいるかもしれませんが、適切に治療を続けることで、これまでとあまり変わらない生活を送る人が増えてきました。

原因

クローン病のはっきりとした原因はまだ明らかになっていません。
現在は、生まれつきの体質(遺伝的要因)に、食事、喫煙、生活習慣などの環境要因が加わることで、消化管内の免疫システムが過剰に働くことによって発症するのではないかと考えられています。また、腸内細菌バランスの乱れなどが、クローン病の発症に関係するのではないかといわれていますが、いまのところ原因は不明です。

症状や合併症
◯主な症状
クローン病の症状は患者さんによってさまざまで、どこに炎症が起きているかによっても異なります。最も一般的な症状は下痢と腹痛であり、患者さんの半数以上にみられます。また、体重減少や発熱といった全身症状が発生するケースも多いです。潰瘍性大腸炎と同じく、血便がみられることもありますが、さほど頻度は高くありません。これらの症状は常に出現しているわけではなく、多くの場合、改善したり悪化したりを繰り返します(再燃寛解)。
  • 腹痛
  • 発熱
  • 体重減少
◯合併症
クローン病は、進行すると消化管の内外にさまざまな合併症を引き起こすことがあります。腸管に発生する合併症は「腸管合併症」と、腸管以外の全身に発生する合併症は「腸管外合併症」と呼ばれています。

主な腸管合併症には、腸管内が狭くなったり閉塞したりする「狭窄(きょうさく)」や「腸閉塞」、腸管に穴があく「穿孔(せんこう)」、腸管同士や腸管と他の臓器がつながって内部でトンネルを形成する「瘻孔(ろうこう)」、膿がたまる「膿瘍(のうよう)」などがあります。
また、クローン病では、肛門付近が膿む「肛門周囲膿瘍(のうよう)」や、肛門周囲の皮膚と直腸がトンネルのようにつながってしまう「痔瘻(じろう)」など、肛門病変もよくみられます。さらに、クローン病が長期間続くと、がん(小腸、大腸、痔瘻)の発症リスクが高くなると考えられています。治療にあわせて、定期的にがん検査を受けることが大切です。

一方、腸管外合併症としては、関節炎や皮膚疾患、眼疾患などがあります。そのほか、胆石や腎結石、脊椎炎、口内炎、静脈血栓などが生じることもあります。

検査・診断

クローン病は、1つの検査だけで診断することが難しく、問診や複数の検査を行いながら、ほかの病気ではないことを確認しながら診断していくことになります。

最初に行うのは問診です。患者さんの症状とその経過、病歴(家族の病歴を含む)、服薬状況などについて詳しく話を聞きます。

問診の結果、クローン病が疑われる場合には、便検査や血液検査、画像検査を行います。そのなかでもクローン病の診断でとくに重要なのが、画像検査です。内視鏡検査や、バリウムを用いたX線検査を行い、炎症や潰瘍がある場所、形態、程度、範囲などを調べます。
これまで小腸の内視鏡検査は難しいとされてきましたが、「カプセル内視鏡」や「バルーン内視鏡」などを利用することで、これまでよりも低侵襲で小腸の検査ができるようになりました。
併せて、エコー、CT、MRIなどの画像検査を追加することもあります。
また、必要に応じて、内視鏡検査と併せて、生検(粘膜組織を採取して顕微鏡で調べる検査)を行うこともあります。

そして、最終的には、これらの検査結果を総合し、クローン病を確定診断することになります。


参考
難病情報センター (外部リンク)