公開:2021年9月28日

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IBDとは

炎症性腸疾患のことで、一般的には潰瘍性大腸炎とクローン病のことを指しています。

監修:名古屋大学医学部附属病院 消化器内科 講師 中村 正直 先生

公開:2021年9月28日

監修:名古屋大学医学部附属病院 消化器内科
講師 中村 正直 先生

潰瘍性大腸炎の治療

治療目標

原因が明らかにされていない潰瘍性大腸炎を完治に導く治療法はまだ確立されていません。しかし、潰瘍性大腸炎は、適切に治療を行い、症状をコントロールし続ければ、健康な人と同じように生活し、人生を送ることが可能な病気です。

潰瘍性大腸炎は、多くの場合、炎症が活発で症状が悪くなっている「活動期」と、症状が日常生活に支障がない程度に落ち着いている「寛解期」を繰り返します。一度、寛解が得られた後に再度症状が悪化することを「再燃(さいねん)」といいます。
潰瘍性大腸炎の治療目標は、活動期であれば「できるだけ早く寛解期に導くこと(寛解導入)」、寛解期であれば「落ち着いている期間を少しでも長く維持すること(寛解維持)」です。

潰瘍性大腸炎の治療の基本となるのは、薬物療法を中心とした内科的治療です。しかし内科的治療で十分な効果が得られない場合には、外科的治療(手術)を行うこともあります。

内科的治療(薬物療法)

潰瘍性大腸炎の治療には、炎症を抑えたり、免疫機能を調整したりするさまざまな薬が用いられます。そしてそれらの薬の種類や投与量を、重症度・病期などにより調整しながら病気をコントロールしていくことになります。使用する薬については、医師、薬剤師などから説明を受けてください。
潰瘍性大腸炎に用いられる薬剤には、主に下記のようなものがあります。

◯アミノサリチル酸製剤
腸の炎症を抑える効果があり、主に、軽症から中等症における寛解導入、寛解維持(再燃予防)に用いられます。通常は経口で服用しますが、炎症が強い場合などには注腸剤(肛門から直接注入する薬)や座薬タイプを使う場合もあります。潰瘍性大腸炎の治療において、最も一般的に用いられる薬です。

◯副腎皮質ステロイド剤
強力な炎症抑制作用を持ち、主に中等症から重症における寛解導入薬として使用されます。ただし、問題となる副作用も多いため、長期間の投与は推奨されていません。また、副腎皮質ステロイド剤には再燃を予防する効果はないので、寛解維持には用いられません。

◯免疫調節薬
体内の免疫反応を調節することで、炎症を抑える薬です。寛解導入と寛解維持のどちらの場合でも用いられます。主にアミノサリチル酸製剤で寛解が十分に維持できない場合や、副腎皮質ステロイド剤を止めると症状が再燃するような場合に用いられます。

◯免疫抑制薬
強い免疫抑制効果のある薬剤。主に、副腎皮質ステロイド剤で効果がみられない重症例の寛解導入に用いられます。

◯抗TNF-α抗体製剤
炎症性サイトカイン(炎症反応を引き起こす物質)の1つであるTNF-αの働きを阻害する薬です。寛解導入、寛解維持のどちらにも用いられ、主にアミノサリチル酸製剤や副腎皮質ステロイド剤などで効果が得られない中等症~重症の患者さんに使用されます。

◯抗IL-12/23抗体製剤
免疫反応を引き起こすIL-12とIL-23の働きを弱め、炎症を抑える薬です。抗TNF-α抗体製剤と同様に、アミノサリチル酸製剤や副腎皮質ステロイド剤などで効果が得られなかった場合の、寛解導入や寛解維持に用いられます。

◯α4β7インテグリン阻害剤
リンパ球の腸管への浸潤を制限し、炎症を抑制する薬です。こちらも、アミノサリチル酸製剤や副腎皮質ステロイド剤などで効果が得られなかった場合の、寛解導入や寛解維持に用いられます。腸に特異的に(限定して)作用するため、全身への副作用が少ないと考えられています。

◯JAK阻害剤
炎症反応の元となる、炎症性サイトカインを抑制する薬です。α4β7インテグリン阻害剤と同様に、アミノサリチル酸製剤や副腎皮質ステロイド剤、免疫調節薬などで効果が得られなかった場合に、中等症から重症の患者さんを対象に、寛解導入や寛解維持に用いられます。

内科的治療(血球成分除去療法)

潰瘍性大腸炎の内科的治療には、薬物療法のほかに「血球成分除去療法」があります。この治療法は、炎症の引き金になっている白血球の一部を血液から除去する治療法です。血液透析のように、特殊な機械を用いて体から血液を取り出し、ビーズなどで対象となる血液成分を吸着除去します。その後、再び患者さんの体に血液を戻します。白血球の中の顆粒球と単球のみを吸着・除去する「顆粒球除去療法(GMA)」がよく行われています。主にステロイド依存例、抵抗例の寛解導入治療に用いられます。

外科的治療(手術)

薬物療法を中心とした内科的治療を行っても症状が改善しない場合や、重篤な合併症がある場合には、手術を行うこともあります。現在多く行われる手術方法は、大腸をすべて摘出するものですが、潰瘍性大腸炎で炎症が発生するのは、大腸のみであるため、大腸をすべて摘出することで、その後炎症は起こらなくなります。大腸全摘術を行った場合、以前は、多くのケースで人工肛門を一生つける必要がありました。しかし、現在では、主に小腸の末端(回腸と呼ばれます)に回腸嚢という便をためる袋を作り、その回腸嚢と肛門をつなぐ手術が行われるようになっています。この術式を用いることで、肛門を温存し、自然排便の機能を維持することが可能です。
手術が必要になるのは主に次のようなケースです。

◯原則として手術が必要なケース
・腸に穿孔(穴があく)がある(腸管穿孔)
・腸から大量に出血している(大量出血)
・中毒性巨大結腸症になっている(中毒性巨大結腸症)
・重症にも関わらず、内科的治療に効果が認められない
・大腸がんがある

◯患者さんの状態と術後の生活の質を考慮して判断されるケース
・副作用のため、副腎皮質ステロイド剤などの薬が使用できない
・内科的治療では十分な効果が得られず、生活の質が著しく損なわれている
・がん化する可能性の高い合併症がある

参考

難病情報センター (外部リンク)

「令和元年度改訂版 潰瘍性大腸炎・クローン病診断基準・治療指針」厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患等政策研究事業「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」(鈴木班)令和元年度分担研究報告書(外部リンク)

『IBDを日常診療で診る』(日比紀文・久松理一編/羊土社 2017年)(『消化器Book02 炎症性腸疾患を日常診療で診る』(2011年)を改題)