公開:2024年10月31日

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IBD診察連携の
現場から

チームで取り組むIBD診療の実態についてご紹介します。

公開:2024年10月31日

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IBD治療におけるチーム医療の重要性

(取材日時:2024年1月11日 取材場所:グランフロント大阪 ナレッジキャピタル
カンファレンスルーム)

医療法人錦秀会 インフュージョンクリニック
院長:伊藤 裕章 先生
看護師:阪上 佳誉子 さん
薬剤師:松本 美紀 さん
事務スタッフ:島田 みさ代 さん
心理カウンセラー:吉田 愛 さん

第3回 個々のスタッフが得意な部分を最大限発揮し、
チーム医療の質を高める

近年、医師や看護師をはじめとした多種多様な専門職が連携し、医療を提供する「チーム医療」が重視されています。炎症性腸疾患(IBD)の治療においても、身体的な苦痛のみならず、心の問題や社会的な不安を抱えているIBD患者さんを多職種で支えていく体制が望まれています。2010年のクリニック開業時から、多職種でIBD患者さんを支えるチーム医療を行なっている、医療法人錦秀会インフュージョンクリニック(大阪)のスタッフの皆さんに、チーム医療を実践するに至った経緯や患者さんに対する思い、IBD医療を支えるチームの一員としての心がけなどを伺いました。

心の面からアプローチすることで、患者さんの心身のつらさの緩和をはかる

心理カウンセラー 吉田愛さん

心理カウンセラー 吉田愛さん

心理カウンセラーは、チーム医療の一員ではあるのですが、チーム医療に直接介入するのではなく、少し離れた立場から看護師や事務スタッフの方と連携をとりながら、必要に応じて患者さんの情報を共有するようにしています。なぜならカウンセリングは患者さんとの一対一の関係性であることがとても重要だからです。

患者さんは、ご自分では「実はつらかった」という気持ちに気づいていない方も多いため、カウンセリングではまずはご自分のことを知っていただくことから始めています。体の状態が良くないときは心がネガティブに傾きがちで、「自分の心が弱いからいけない」などと自分を責めてしまうことがあります。そういった状況でのカウンセリングでは、「しばらくは体のことと心のことを切り離して考えましょう」と伝えています。

心の問題が解決していく中で、身体の症状が自然と緩和されることもあります。私は心理カウンセラーとして、主に心の面からアプローチしていますが、身体面でも精神面でも全体として患者さんの幸福度が高くなることを目指しているのは他のチームスタッフの皆さんと一緒です。

個々のスタッフが得意な部分を最大限発揮し、チーム医療の質を高める

院長 伊藤裕章先生

院長 伊藤裕章先生2回目

今後は全てのスタッフがそれぞれの得意な部分を最大限発揮することで、さらにチーム医療の質を高めたいと考えています。しかし、満足のいく医療であるかを決めるのは患者さん自身です。一人ひとりの患者さんの満足度を高めるためには、患者さんを含めたチーム作りを考えていく必要があるでしょう。

現在のIBD診療においては、共同意思決定(Shared decision making : SDM)という概念が提唱されています。SDMとは、患者さんと医療者がともに相談・協力しながら意思決定を行うプロセスのことです。SDMを実践するには、各医療者が専門的な立場からチームを形成し、その中に患者さんも参画することが重要となります。また、医師やメディカルスタッフに病気のことや治療のことを聞いたり、ご自身の体調のことや日常生活の希望について伝えたりことによって、徐々に治療やケアの方向性を決定していくことが大切です。

患者さんがチームに関わるといっても、患者さん自身が治療をするわけではないので、「セルフケア」という形で治療に参加してもらうことになります。IBDという病気と長くつき合っていく中で、患者さん自身が「こういうときは調子が悪くなる」といった感覚を身につけてきています。例えば、「今日は食事を控えておこう」と患者さん自身が体調の変化に気づき、判断することも一つのセルフケアです。

患者さんが医療機関にいるのは人生の中でほんのわずかな時間です。それ以外のほとんどは医者や看護師が身近にいないところで過ごすのです。だからこそセルフケアが重要だという意識を持つことが大切になります。ただし、食事や行動を「我慢しよう」と思うのは、身体からの不調のサインですから、早めに医療機関に連絡してください。多くの患者さんが「仕方がない」、「我慢すればいい」と思い、やり過ごしてしまうことが多いのですが、医師に相談することで解決する手立てがあるかもしれません。そのときは同じチームの一員として、私たちがサポートします。セルフケアといっても決してひとりぼっちではないということを忘れないでほしいのです。

インフュージョンクリニックのスタッフの皆様