公開:2021年09月28日

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エキスパートインタビュー

IBDの治療やケアについて専門医にお話を伺います。

IBDにおける腸管外合併症

IBDは、大腸や小腸といった消化管だけでなく、皮膚や関節をはじめとする全身のさまざまな部位に病変が発生することがあります。これらの病変は一般的に腸管外合併症と呼ばれ、下痢や腹痛などの主症状に加え、多くのIBD患者さんの悩みの種となっています。今回は、主な腸管外合併症について、その特徴や治療法、注意する点などについて、藤田医科大学の消化器内科で講師を務める長坂 光夫 先生にお話をうかがいました。

藤田医科大学 消化器内科 講師

長坂 光夫 先生

(取材日時:2021年9月28日 取材場所:名鉄グランドホテル)

長坂光夫 先生1

藤田医科大学 消化器内科 講師

長坂 光夫 先生

よくある腸管外合併症②-末梢性関節炎

アフタ性口内炎と並び発症頻度の高い腸管外合併症が末梢性関節炎です。末梢性関節炎とは、手や足、肘、膝、肩といった大きな関節や末梢の関節に炎症が起きるもので、少しこわばる、違和感があるといった程度から、強い痛みで物が持てなくなったり、歩けなくなったりする方までいます。発現するタイミングはさまざまで、初診の段階から関節の痛みを訴える患者さんもいますし、ある程度経過してから発症することもあります。末梢性関節炎は一度治っても何度も繰り返す傾向がみられます。

末梢性関節炎の症状とIBDの活動性とは関連すると考えられています。一般的に末梢関節炎は消化器症状の発症に遅れて発現し、5関節未満で下肢に多く出現し、消化器症状の活動性と並行して推移することがほとんどです。

末梢性関節炎では、まず関節の安静を図り、ステロイド薬の内服などにより治療を行います。抗TNF-α抗体製剤の有効性も確認されているため、IBDの活動性も考慮しながら治療を行います。

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よくある腸管外合併症③-皮膚病変

口内炎や関節炎ほどではないものの、皮膚病変もIBDの腸管外合併症としてよくみられます(IBDの15%)。なかでも代表的なのが結節性紅斑です。結節性紅斑は、くるぶしや手首、指といった骨の出っ張った部分が赤く腫れ上がる合併症で、ひどくなると熱をもって痛みが強くなり、ペンが持てなくなったり、歩けなくなったりすることもあります。海外ではクローン病の患者さんに多いとされていますが、潰瘍性大腸炎の患者さんにもしばしばみられます。疾患活動性と相関するとされていて、約3割の患者さんは繰り返し発症する傾向があります。

結節性紅斑の治療は、軽いものであれば、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を用いて行いますが、長期間投与を行った場合、潰瘍性大腸炎を悪化させる可能性があるため、ステロイド薬を短期間使用することが多いです。また、腸病変の活動性とリンクする場合もあり、そのようなケースは免疫調節薬、抗TNF-α抗体製剤などが有効な場合もあります。

結節性紅斑に対しては、できるだけ早く治療を行い、症状を抑えることが重要です。というのも、そのまま症状が進行すると壊疽性膿皮症(えそせいのうひしょう)という重篤な合併症につながるおそれがあるからです。壊疽性膿皮症は、皮膚に潰瘍ができえぐれてしまう合併症で強い痛みを伴います。多くはくるぶしやすねにみられます。重篤化すると長期の入院治療が必要になることがあります。壊疽性膿皮症の発症のメカニズムは、いまだ不明です。壊疽性膿皮症の治療はほとんどの場合ステロイドから始め、効果が認められない場合には他の薬剤を使用することがあります。

最近では抗TNF-α抗体製剤使用中に出現する全身性の乾癬様の皮疹(逆説的反応:パラドキシカル・リアクション)が報告されています。軽微なものは、ビタミン剤や軟膏などで治療しますが、難治のものは、抗TNF-α抗体製剤を中止することがあります。

その他の腸管外合併症、患者さんへのメッセージなどについてうかがいます。>