Dr.コラム Doctors column

2016年9月

Vol.5 良好な状態を維持するための治療 No.2
クローン病
(CD:Crohn’s Disease)

同じ炎症性腸疾患(IBD:Inflammatory Bowel Disease)でも、クローン病は潰瘍性大腸炎よりも食事の影響を受けやすいという特徴があります。クローン病の活動性を抑え、良好な状態を維持するためには、薬物療法だけではなく日常のケアも大切です。
前回のコラム(Vol.4良好な状態を維持するための治療No.1潰瘍性大腸炎)につづき、今回のコラムではクローン病の寛解維持療法について、東邦大学医療センター佐倉病院 内科学講座 教授の鈴木康夫先生にうかがいました。

薬物療法と日常のケアで良好な状態を保つ

東邦大学医療センター佐倉病院
内科学講座
教授 鈴木 康夫 先生

クローン病は、症状の重い活動期と症状がほとんどない寛解期を繰り返しますが、きちんと治療すれば長く寛解期を保つことができます。寛解期をできるだけ長く保つための治療を、寛解維持療法といいます。

寛解維持療法には、まず5-ASA製剤による薬物療法が欠かせません。5-ASA製剤は、病気を寛解に持ち込む寛解導入療法の基本薬でもありますから、同じ薬をずっと飲み続けることになります。
寛解導入療法で、免疫調整薬や抗TNF-α製剤(バイオ医薬品)を使用した方は、これらの薬も継続します。


寛解維持療法でもう1つ重要なことは、日常のケアです。
なかでも食事は大切です。クローン病は食生活の影響を受けやすいため、不規則な食事や夜遅くの食事、食べ過ぎ・飲み過ぎなど、腸に負担のかかることは避け、栄養バランスの整った食事を規則正しく食べるように心がけましょう。
好ましいのは低脂肪、繊維分が少ない低残渣(ていざんさ)な食事ですが、腸の状態が落ち着けば、普通に近い食事もできるようになります。

定期的な血液検査で再燃の兆しを見つけ、対処する

症状が落ち着いていると、定期的な通院をおっくうに思うことがあるかもしれません。しかし、クローン病は、自覚症状があらわれたときにはすでに腸の病変がかなり進んでいることが多いので、定期的な血液検査が必須です。検査をすることで、はっきりと自覚症状が出る前に病状の変化を早期発見することができます。

クローン病の活動性は、CRP(炎症反応)や白血球数、血小板数などをみて判断します。
当院では診察前に必ず血液検査を実施し、数値に変化がみられたときは、患者さんにいつもより細かく症状について聞いていきます。すると、「そういえばお尻がいつもより痛痒い」「口内炎ができた」「便がやわらかめ」「関節が痛い」など、再燃を示す兆候が出始めているものです。

これらはどれも小さな体調の変化であるため、患者さんはたいしたことがないと思っている場合が多いのですが、血液検査の数値にははっきりと変化があらわれます。
それをしっかりと拾い上げてすぐに手を打てば、それ以上悪化させることなく寛解期を保つことができます。

寛解期の診察は1~2ヵ月に1度が一般的ですが、もしも上記のような気になる症状がみられたら、病院に電話して相談しましょう。

病気と自分の体を理解し、体調の変化を見逃さない

「季節の変わり目や冬など、自分が
体調をくずしやすい時期を理解して
おくとよいでしょう」

患者さんがご自分の体に目を向け、小さな変化に気づくことは、寛解期を長く保つうえでとても役立ちます。
クローン病の病変は腸にとどまらず、痔瘻などの肛門病変や、口内炎や関節炎、眼病変などの腸管外合併症をきたします。過度に神経質になる必要はありませんが、毎日の体調チェックを習慣にしましょう。

クローン病は、潰瘍性大腸炎に比べ直接的なストレスの影響は強くないようですが、季節の変わり目や、血液循環のわるくなりやすい寒い時期に体調をくずす方が多いようです。

どのようなときに自分は体調をくずしやすいか、よく理解しておくと、あわてずに早めの対処ができます。

体調が思わしくないと、たえず病気のことを考えてしまいがちですが、症状が落ち着いていれば病気のことを忘れていられる時間が増えます。また、毎日仕事や学校に通い、普通に食事ができることで生活の質も向上します。児童であれば、友だちと同じように給食が食べられることだけでも、その子の学校生活は大きく満たされると思われます。

病気をコントロールして自分の夢を叶える

クローン病は完治が難しい病気ではあるものの、適切に治療することで多くの方が病気をうまくコントロールして良好な状態を長く保っています。
クローン病は比較的若い患者さんが多く、親御さんのご心配も大きいことと思いますが、寛解維持療法を続けながら自身の夢を叶えている方はたくさんいます。進学、就職、結婚、出産など、何ひとつあきらめる必要はありません。
そのためにもっとも大切なことは、寛解導入してそれを維持することです。「治療すればよくなる」という実感は、患者さんの自信につながり、その後の治療にもよい影響を与えます。

たとえこれまでがうまくいかなかったとしても、再スタートすればそこから寛解導入、寛解維持に持ち込むことは可能です。寛解導入までにかかる時間の目安は約3ヵ月です。迅速に治療し、できるだけ長期間良好な状態を保つというのがクローン病治療の基本です。