公開:2021年10月18日

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エキスパートインタビュー

IBDの治療やケアについて専門医にお話を伺います。

モニタリング(定期検査)の重要性

IBD治療の進歩は著しく、適切な治療をすれば安定した日常生活を送れる人も増えてきました。しかし、根治することは難しく、長期間にわたってモニタリング(定期検査)を受けつつ、その都度適切な治療を行うことがIBD治療の基本となります。症状が安定していても定期的に検査を受けることがなぜ必要なのか、また検査の種類やその意義について、福岡大学消化器内科主任教授の平井 郁仁 先生にお話をうかがいました。

福岡大学 消化器内科

主任教授 平井 郁仁 先生

(取材日時:2021年10月18日 取材場所:ホテル日航福岡)

平井郁仁先生1

福岡大学 消化器内科

主任教授 平井 郁仁 先生

検査の頻度と内容は治療法や症状に応じて

IBDでは病気の状態に応じて適切な治療を行いますが、そのためには定期的なモニタリングを行うことが必要です。症状だけでは病気の活動性を把握することができないため、血液検査や内視鏡検査などを行って、症状にはあらわれない炎症、再燃の徴候まで捉えることが大切です。

症状が落ち着いている方であれば1~3カ月ごとに受診していただき、モニタリングをするのが一般的です。しかし、モニタリングを行う頻度は症状やそれまで受けてきた治療によって異なるため、一概にはいえません。
例えば潰瘍性大腸炎は軽症、中等症、重症とあり、軽症でしたら3カ月に1回程度の血液検査となります。しかし、重症で発症した場合はバイオ医薬品や免疫抑制剤を使うケースが少なくなく、治療そのものに伴うリスクをチェックする意味でも、数週間から1カ月程度の短い間隔でモニタリングすることになります。
また、発症時の活動性が高い人、年齢が若い人のほか、潰瘍性大腸炎では炎症範囲が広いなど、再燃するリスクが高い人には、より厳密なモニタリングを行います。

治療目標に合わせた「T2T」という治療戦略


IBDの治療を進めるにあたって、最近では「T2T(treat to target)」という治療戦略が重要だと考えられています。「T2T(treat to target)」は日本語で「目標達成に向けた治療」と訳され、もともとは関節リウマチの治療において世界的に広がっていった考え方です。IBD同様に根治することが困難な関節リウマチでは、適切な治療で長期の寛解を目指すことになります。「病気の治癒」は目標とはならず、「症状のコントロール」や「安定した社会活動への参加」といった患者さんの希望を達成するための治療計画として実践されてきました。
IBDについても数々の治療薬が開発されてきましたが、まだ根治できる治療法はなく、長期的な寛解を維持するための治療が行われています。このため、IBDにおいてもT2Tが重要だと考えられるようになりました。

クローン病におけるT2Tの実践


図は、クローン病における世界的なT2Tの進め方をまとめたものです。この図の中では「臨床症状消失」「バイオマーカーの陰性化」「潰瘍消失(粘膜治癒)」という3つをターゲットとしていますが、これらはそれぞれ「症状を抑えて学校や会社に行けるようになる」「CRP(血清C反応性タンパク)やカルプロテクチンの数値が改善して安定する」「粘膜の状態が正常になる」と言い換えることができます。
一番よいのは潰瘍がなくなって粘膜治癒することですが、いきなり完璧を目指すのではなく、患者さんの希望に応じた安定した生活を送れるよう治療戦略を考えていくための道筋がT2Tです。
この図では内科治療を始めて6カ月で治療の見直しをするとしていますが、当院では治療を始めて数週間から2カ月以内くらいには治療の効果を確認します。

このような治療戦略を実践する上で、定期的なモニタリングは欠かせません。最近では早期に病態の変化を捉えて病気が悪化する前に治療を最適化する「タイトなコントロール」が重要だとされていることから、症状が安定していてもこまめに検査を行うようになっています。
例えば、再燃を繰り返した結果、クローン病では手術をするたびに腸が短くなり、結果的に病態が悪化してしまうこともあります。しかし、手術が必要になるほど悪化する前に内視鏡やバイオマーカーで予兆を捉えてその時点でコントロールすれば、予後が大きく改善できるのです。これは潰瘍性大腸炎でも同じです。

そして、1つのターゲットをクリアしたら次のターゲットへとステップアップすることが可能になりますから、それに応じて検査の頻度や検査方法も変化していくということをご理解ください。

IBDの治療で行われる検査についてうかがいます>