潰瘍性大腸炎
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治療

薬物療法

潰瘍性大腸炎の治療薬

潰瘍性大腸炎は、免疫機能(ウイルスなど外敵を除去する機能)の異常によって起こると考えられています。この病気になった患者さんの体では、ほんとうは体を守る働きをすることになっている免疫細胞が大腸を攻撃してしまうことによって、炎症が起こるのです。

薬物療法では、炎症を抑えたり、免疫機能を調整したりすることによって、症状をコントロールします。薬物療法で使われる薬剤の投与方法、作用、副作用などについては、以下の表を参考ください。

潰瘍性大腸炎の薬物療法には、炎症が活発な発症時に行う治療、炎症が比較的落ち着いた状態を維持するための治療、再び炎症が活発になってきたときの治療があります。患者さんの重症度などによって、薬剤の種類や投与量が決められます。

■寛解導入療法

発症時、「寛解」へ導くための寛解導入療法を行います。基礎的な薬剤は5-ASA製剤となりますが、早めに副腎皮質ステロイド剤など強力な炎症抑制作用が認められる薬剤を使用することもあります。さらに、きっちりと寛解状態に導くために5-ASA製剤や免疫調整薬を使用し、腸注や坐薬などによる局所療法を併用します。

■寛解維持療法

寛解が得られたら、良好な状態を維持するために、治療を続けます。寛解維持療法の基本は5-ASA製剤をしっかりと医師の指導通りに服用することです。さらに週末注腸併用療法(メサラジン)を行うのがポイントです。

■再燃時の治療

再び活動期の兆候がみられたら、炎症が軽症のうちに寛解導入を目指します。5-ASA製剤を増量し、極力、副腎皮質ステロイド剤を使用せずに寛解へ導くようにします。

■難治例の治療

5-ASA製剤、免疫調整剤、副腎皮質ステロイド剤などで十分な効果がみられない場合は、バイオ医薬品の抗TNF-α抗体製剤もしくはカルシニューリン阻害薬を使用します。抗TNF-α抗体製剤は海外では潰瘍性大腸炎の中心的な薬として多くの方に使われています。抗TNF-α抗体製剤で寛解が得られた場合は、寛解維持療法でも同剤を使用します。

バイオ医薬品によって変わった潰瘍性大腸炎の治療

薬剤のなかでも、潰瘍性大腸炎の治療を大きく変えたのが「バイオ医薬品(生物学的製剤)」です。バイオ医薬品とは、生物を利用してつくった薬剤のことで、一般的には、ワクチンや血液製剤などが知られています。

潰瘍性大腸炎を含むIBDには、根本的な治療薬がないのですが、免疫細胞が体を守ろうとする過程で余分につくってしまった「TNF-α」という物質の働きを抑えることで、大腸の炎症を改善することができると考えられています。

日本では2002年に、クローン病の治療薬として、初めてバイオ医薬品のなかの抗TNF-α抗体製剤「インフリキシマブ」が認可されました。潰瘍性大腸炎についても、2010年に認可され、現在では、IBD(潰瘍性大腸炎、クローン病)の中心的な治療薬の一つとなっています

バイオ医薬品の新たな選択肢 バイオシミラー(BS)

新薬の特許が切れてから別の会社で製造販売される医薬品を後発薬といいます。そのなかで、バイオ医薬品の後発薬をバイオシミラー(バイオ後続品)、それ以外の後発薬をジェネリック医薬品(後発医薬品)といいます。
バイオ医薬品は治療効果の高いお薬です。とても魅力的ですが、医療費が高くなってしまうのも事実です。
経済性に目を向けたとき、バイオシミラーは選択肢のひとつになります。

■バイオ医薬品とは

科学技術の発展で、医薬品の開発は大きく進歩しました。とくにバイオ医薬品と呼ばれるお薬の登場は、これまで治療が困難だったさまざまな病気の治療法を大きく変えました。関節リウマチの治療もバイオ医薬品の登場で飛躍的に進歩しました。
バイオ医薬品は高度なバイオ技術を応用して細胞などを使って、製造されます。その製造には、高い技術力と最新の専用設備が必要となります。そのため、通常の薬剤よりも開発や製造にコストがかかり、医療費が高額になってしまいます。

■バイオシミラーとは

「バイオシミラー」は、すでに発売されているバイオ医薬品(先行品)の特許が切れたあとに、開発・発売するお薬と冒頭で説明しましたが、バイオシミラーの価格は、同じ成分のバイオ医薬品(先行品)の価格の原則70%で算定されるというルールがあります。先行品に比べ、薬の価格が低く抑えられているという点では、ジェネリック医薬品と同じです。



ただし、バイオシミラーとジェネリック医薬品には異なる点があります。

ジェネリック医薬品は、先行品と同じ成分で作られているため、先行品と同じ効果があるだろうという仮定のもと、臨床試験は行っていません。
一方、バイオシミラーは、高度なバイオ技術を用いるので、製造工程が多くとても複雑です。そのため、発売前に、効果と安全性が先行品と同じであることを証明するために、実際の患者さんを対象とした臨床試験を行います。そして、効果と安全性が先行品と同じであると認められたものが、薬として使われているのです。

効果と安全性が先行品※と同じ
※新薬として発売されたバイオ医薬品を先行バイオ医薬品、略して先行品といいます。

潰瘍性大腸炎の治療に、バイオシミラーを使う場合には、最初からバイオシミラーを使う場合と、すでに同じ成分の先行品を使っている人が、途中から切り替える場合とがあります。


■経済性という視点からバイオシミラーを考える

すでに述べていますが、バイオシミラーの価格は先行品の70%ほどに抑えられています。
バイオ医薬品の治療効果は十分期待できるものの、医療費が高額になるため、バイオ医薬品を使用することに悩む方もいるかもしれません。経済性を考えた際、バイオシミラーは治療の選択肢のひとつとなることでしょう。


国民医療費が年々増加する日本の課題

日本の国民医療費は年々増加し、平成27年度の医療費は、41.5兆円となり、40兆円を超えた前年度に比べて、さらに1.5兆円の増加となっています。国民一人あたりに換算すると、年間でおよそ32.7万円の医療費が支払われています。こちらも対前年度3.8万円の増加になっています。
少子高齢化の日本では、今後ますます医療保険財政がひっ迫することが想像に難くありません。厚生労働省では医療保険財政の改善のために、後発薬の普及を推進しています。
バイオシミラーもまた、患者さんの医療費負担を軽減するとともに、国民医療費の削減にも貢献できるのではないかと考えられています。


厚生労働省ホームページ「平成27年度 国民医療費の概況」より作成