Dr.コラム Doctors column

2020年7月

Vol.16 子どものIBD(後)
寛解期~学校生活編

IBDという病気を理解してもらうために まず先生に正しく理解してもらう

新井勝大先生

まず学校側には、しっかりと病気のことを伝えることをおすすめします。学校側にIBDという病気に対する正しい知識がないと、配慮ある対応も期待できません。
保護者から担任の先生や養護教諭に説明することが多いと思われますが、できれば、学年主任の先生など責任のある立場の人にも同席してもらうとよいでしょう。IBDの患者数が増えているといっても、この病気への知識がない先生も多いでしょうから、ていねいに説明することが大切です。

なかには、病気の深刻さを理解してくれない先生もいるようです。病気を軽く考えて、「もっとがんばれるだろう」とはっぱをかける先生がいる場合は、養護教諭や学年主任、場合によっては校長にも間に入ってもらい、わかってもらえるまで説明することも大切です。それでも理解が得られないときは、教員に病院まで来てもらって主治医説明する必要があるケースもあると思います。

学校生活の問題~トイレは大きな問題、学校に配慮を求める

学校生活でとくに配慮が必要になるのはトイレの問題です。当事者にとっては休み時間に排便のためにトイレに入るのは嫌なものです。とくに男子は個室に入るとそれを茶化す子がいますし、女子でも音が気になってつらいという声を聞くことがあります。高校生になれば、トイレに行くことで、からかったりする生徒はほとんどいなくなりますが、小学校高学年から中学生くらいまでは当事者にとって、トイレの問題は深刻です。学校側に申し入れて、生徒用のトイレではなく、職員用のトイレを使わせてもらうなど配慮してもらうといいでしょう。

調子があまりよくないときは、授業中にも頻繁にトイレに行かなくてはならないことがあります。担任の先生からクラスメートたちに「〇〇君はおなかが弱いから」と一言、伝えてもらうようにしておくと、授業中にもトイレに行きやすくなると思います。

学校給食 栄養士にアドバイスをもらう

給食もIBDの子どもにとっては大きな壁となります。給食のメニューには、揚げ物が少なくなくて、脂質がけっこう多いのです。学校から弁当持参の許可が出る場合もあるのですが、クラスメートから「なんで○○さんだけ給食を食べなくていいのか!」といわれることもあります。

なるべく給食で対応できるように、あらかじめ病院の栄養士に献立表を見てもらって、アドバイスをもらうとよいでしょう。そうすればこの日の給食はパスしたほうがいいとか、これは食べないようにしようと決めておくことも可能です。また、揚げ物だったら、衣をはがしてから食べるなど食べ方の工夫をすることも考えられます。

また、特に活動期の子どもたちは牛乳を避けたほうがよいかもしれません。牛乳は脂肪分が意外と多いのです。最近は牛乳アレルギーの子もめずらしくないので、牛乳を飲まなくても、現在はそれほど違和感をもたれることはありません。

学校行事~遠足、修学旅行はできる範囲でチャレンジを!

学校のイベントについては、先生たちとよく相談しながら、参加できるものとできないものを決めておきましょう。たとえば、山登り遠足などで2~3時間ハイキングする場合は、途中にトイレがないことが多く困ることがあります。調子があまりよくないときは、参加をとりやめることも考えましょう。

ただ、病気のせいでプールに入れなかった、修学旅行も行けなかった、友だちと外食もできなかったと、あれもできない、これもできないとなると、学校での思い出はかなしいものばかりになりかねません。私としては極力、チャレンジさせるべきだと考えています。もちろん、病状によってできないお子さんもいますが、ある程度できそうな子どもは安全運転ばかりでなく、ちょっと攻める場面をつくるのも大切なことではないでしょうか。

親御さんへのメッセージ 治療は日々進歩しています!

新井勝大先生

子どもにとってもっともつらいのは、治療をがんばっているのに症状が再び悪くなったときでしょう。さらに入院ということになると、精神的なダメージは大きいと思われます。しかし、こうしたケースは以前に比べ、格段に減っています。バイオ医薬品が使われるようになって、質の高い寛解状態を維持することが可能になってきたからです。きちんと治療をしていれば、多くの患者さんは日常生活がほぼ普通に送れるようになってきています。

昔なら「難病だから仕方ないよね」とあきらめていたことが、「できる」という実感に変わってきました。私たち医療者が閉塞感を感じる機会も今ではかなり減りました。

よく親御さんたちから「この薬は一生続けなくてはならないのですか」と問いかけられることがあります。私の答えは「NO」です。次々と効果が期待できる新しい薬が出てきて、治療法は日々進歩しています。いずれは治る病気になることを期待し願っています。ただ、そのときに腸が傷みきった状態になっていたら、新しい治療法の恩恵が受けられないかもしれません。だからこそ、今、しっかりと治療をしておく必要があると思っています。