Dr.コラム Doctors column

2020年7月

Vol.16 子どものIBD(後)
寛解期~学校生活編

日常で気をつけること 「ピアサポート」の重要性

普段から心がけてほしいのは「無理をしないこと」と「治療をしっかり受けること」です。IBDは長くつきあっていかなければならない病気ですから、無理をしないことを学ばなければなりません。

小児期は親に連れられて病院に来るので、途中で通院を止めてしまうドロップアウトは少ないのですが、成長するにしたがって学校生活も忙しくなり、通院が途絶えがちになるケースがあります。ドロップアウトを防ぐには、病院に行くのは、自分のからだがよくなるための大切な時間なのだという気持ちを、子どものなかで芽生えさせなくてはいけません。それは医療者側の役目でもあります。

IBDの子どもたちは孤独に耐えているケースが少なからずあり、「なぜ自分だけがこんな目に遭うのか」という気持ちにおちいっている子どももいます。IBDの子どもの治療では、身体的な面とともに心理的な面へのアプローチが非常に重要です。

同じ課題を抱える人同士が互いに支え合うことを意味する「ピアサポート」という言葉があります。これはIBDなどの病気の治療でも、とても役に立ちます。同じ病気で闘っている人の話を聞くことで気づきが生まれ、自分の話を聞いてもらうことで気持ちが解放されることがあります。
IBDの治療が進歩したことで、入院が減り、患者同士が知り合う機会が減った代わりに、最近ではパソコンやスマホからSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を利用して、患者さん同士で交流しているようです。

IBDこどもキャンプ 「ピアサポート」実践の場、同じ病気をもった子ども同士の触れ合い、同じ病気の先輩たちとの触れ合い

新井勝大先生

ピアサポートの場にもなっているイベントのひとつに、日本炎症性腸疾患協会が主催する「IBDこどもキャンプ」というものがあります。小学生から高校生までのIBDの患者さんとその家族が対象のイベントです。そこに、小児期にIBDを発症した大学生や20代の社会人が「こどもリーダー」という位置づけで参加し、子どもたちのサポートをしてくれています。さらに、医師、看護師、薬剤師、栄養士、臨床心理士などの医療スタッフや地元のボーイスカウトの人たちなどボランティアスタッフも同行しますが、私も責任者としてキャンプにかかわってきました。

毎年夏に開かれる「IBDこどもキャンプ」は2019年で9回目を迎え、今回は埼玉県長瀞で1泊2日の日程で行いました。参加した子どもたちにとって、一番大きな経験となるのはこどもリーダーたちとの触れ合いだと思います。同じ病気を乗り越えて大学生になったり、仕事に就いたりしている人たちの話を聞くことで自分の将来に目標を見出すことができ、前向きになれるようです。IBDという病気をもっていても、社会で活躍できるのだと、目の前の人を通して知ることができるのです。また、小児期にIBDを発症した人のなかには、医療関係の仕事に進んでいる人たちが少なくないのは決して偶然ではないのでしょう。

また、キャンプに参加することで、家族にも大きな変化がもたらされます。子どもの将来を悲観しがちな親御さんたちから、「子どもリーダーから直接話を聞いたことで、子どもの闘病を前向きにとらえることができるようになった」という感想や、「自分が悪かったから子どもがIBDになったのでは……と罪悪感にさいなまれてきたが、このキャンプへの参加を境に、そうした悩みから解放された」という声も寄せられています。

子ども同士の触れ合いも大きな意味があります。同じ病気をもつ子どもたちが話をし、一緒に行動することで、ポジティブな気持ちが芽生えていくのです。まさにピアサポートを実践する場といえるでしょう。

学校生活においてIBDの子どもが必要なサポートについてうかがいます。>