Dr.コラム Doctors column

2020年7月

Vol.16 子どものIBD(後)
寛解期~学校生活編

慢性疾患であるIBDは長くつきあっていかなければならない病気です。炎症が鎮まっている寛解期をいかに維持していくかが大事になってきます。さらに、子どものIBDでは学校生活の問題もあります。お子さんは、保護者はどう病気と向き合っていけばいいのか、前回の「IBDの診断・治療編」に引き続き、国立成育医療研究センター小児炎症性腸疾患(IBD)センターのセンター長・新井勝大先生にお話をうかがいました。

(取材日時:2019年8月29日 取材場所:国立成育医療研究センター)

国立成育医療研究センター消化器科 診療部長 児炎症性腸疾患センター センター長 新井勝大先生

国立成育医療研究センター消化器科 診療部長
小児炎症性腸疾患センター センター長
新井勝大先生

IBD、寛解期の注意点 できるだけ普通の生活をさせる

子どものIBDの場合は、寛解期にはできるだけ普通の生活をさせるということが成人以上に大事になってきます。可能な限り日常の制限を減らし、病気をもたない子どもと一緒に生活できるようにするのが基本的なスタンスであると思います。

疲れているとき、寝不足のとき、風邪を引いたときなどは、再燃(症状がぶり返す)のリスクが高まるのは事実です。したがって、「無理をしてはいけませんよ」と注意を促すのは必要ですが、それを何度も繰り返すのは避けるようにしています。あれもだめ、これもだめと、行動に制限を与えてしまうと、問題なくできることにさえ躊躇するようになり、子どものこれからの長い人生にとってはマイナスの影響を与えることにもなりかねません。

IBDの子どもの食生活 普段の環境を尊重する

寛解期の食事について、潰瘍性大腸炎の場合はバランスのとれた食事であれば問題ありませんが、クローン病では脂質をはじめ、さまざまな食事が昔から制限されてきました。今もある程度、食事の制限は必要ですが、それでもいきすぎは禁物です。成長するにつれ、友だち同士で外食する機会もあるでしょう。それぞれの普段の環境をできるだけ尊重することが大切です。

以前に比べると、食事の病気への影響はだいぶ減っています。よい薬も次々に出てきて、とくにバイオ医薬品が登場し、食事の制限もゆるやかになっています。ただし、脂っこいものや香辛料などの刺激物はなるべく控えたほうがよいでしょう。あまり神経質になりすぎることはありませんが、実際に食べてみて体調が悪くなったものは控えるようにするなど、一人ひとりの注意が求められます。

小学生くらいまでは、生活や食事の面で注意すべきことを自然と守れる子がいる一方、なかなか一人では難しい子がいるのも事実です。そうした子どもには、きつい言葉で叱るのではなく、その子の特性を見ながら、受け入れられやすい治療や教育を行うように心がけています。無理やりやらせても長続きしないですから。

子どもだからといって、親が一から十まで教え込む必要はありません。成長するにつれ、自ら考え、行動できるようになります。調子が悪くなれば、どうしてなのか、その原因を自分で突きとめようとして、それまでの治療のなかで医者からいわれたこと、栄養士さんからのアドバイスを思い出すようになります。

IBDの再燃への対処 定期的な検査で病気の変化に気づく

寛解期では再燃を防ぐことがもっとも重要であることはいうまでもありません。不調には早め早めに対処するという心構えが必要です。しかし、再燃が起こったかどうか、すぐに気づくとは限りません。とくにクローン病では、悪くなっても最初のうちはなかなか症状が現れにくいのです。かなり悪くなって、やっと気づくというケースも少なくありません。

症状として現れにくい病気の変化をどう気づくのか、それには、定期的に検査をする以外にありません。クローン病だけでなく潰瘍性大腸炎も同様です。内視鏡などの検査を行いますが、特に潰瘍性大腸炎では便の検査をすることで、腸管に炎症があるかどうか、わかるようにもなってきました。定期的に検査をすることで、早期に再燃がわかり、早めに治療を適正化することで、再び寛解に持ち込むことができるようになってきました。

寛解期を維持するために日常生活で気をつけること、
ピアサポートが子どもに与える影響についてうかがいます。>