Dr.コラム Doctors column

2020年7月

Vol.15 子どものIBD(前)
診断・治療編

潰瘍性大腸炎とクローン病の手術

新井勝大先生

手術は大きな問題です。親の側も子どもには手術させたくないという強い思いがあります。

潰瘍性大腸炎の手術では、基本的に大腸をすべて摘出するので、手術を提案することは、医師にとっても非常に重たい選択です。手術をなるべく避けたいという気持ちがある一方で、その後の人生を考えると、いたずらにその時期を遅らすのはよくないと思っています。
手術を避けることで、子どもによってはステロイドの長期使用が必要となった結果、その副作用に苦しみ、成長障害が生じることもあります。場合によっては、もっと早めに手術を決断しておいたほうがよかったということにもなりかねません。

クローン病の手術では、2つのケースが考えられます。1つはおしりの状態が悪くなっているケースです。肛門病変が悪化してきたら、シートン法という手術をして、膿がたまらないようにするのです。この場合も早め早めの決断をすることが大切です。

もう1つは、適正とされる治療を行い、一瞬よくなったと思っても、またすぐ悪化してしまうケースです。薬を増やしていっても、いずれは手術が必要になる場合には、早めに手術をして、炎症の強い部位を切除したほうが、速やかに安定した状態を保つことができるのです。

IBDの治療選択 適切な治療を適切なタイミングで

潰瘍性大腸炎でもクローン病でも、治療を選択する際には、治療に伴うリスクを考慮しなければなりません。一般的には、一つの薬にも表と裏の顔があり、病気をよくする力がある一方で、臓器障害や感染症などの合併症を引き起こすことも考えられます。
結論としていえるのは、潰瘍性大腸炎の場合もクローン病の場合も、手術を含め、適切な治療を適切なタイミングで行うということです。判断を遅らすと、子どもの負担がかえって増してしまうこともあるのです。
患者さんが子どもの場合、治療を選択するのは親になります。リスクを伴う治療を選択するのは、かなりの勇気が必要です。医師としては、その後の人生が長い子どもの場合は、炎症を繰り返すことで腸管にダメージを与えることは避けたいという思いがあります。腸管のダメージが重いと、その後新しい薬や治療がでてきても使えないということにもなりかねませんから。
親が抱える決断の重さというものを、医師として常に感じていますが、IBDのお子さんの将来を見据えて、最善の治療を提供するために、納得してもらえるよう説明を重ねることの重要性を痛感しています。

後編では、寛解期の注意点、学校生活について新井先生にうかがいます。