Dr.コラム Doctors column

2016年7月

Vol.4 良好な状態を維持するための治療 No.1
潰瘍性大腸炎
(UC:Ulcerative Colitis)

炎症性腸疾患(IBD:Inflammatory Bowel Disease)は完全に治すことが難しい疾患ですが、寛解導入療法で炎症や症状が治まって寛解が得られたのちに、続けて寛解維持療法を行えば良好な状態を長く保つことができます。寛解維持療法について、東邦大学医療センター佐倉病院 内科学講座 教授の鈴木康夫先生にうかがいました。寛解維持療法については、2回に分けてご紹介します。今回は潰瘍性大腸炎についてです。

良好な状態を保つための寛解維持療法とは

東邦大学医療センター佐倉病院
内科学講座
教授 鈴木 康夫 先生

潰瘍性大腸炎は、腸の炎症が活発で症状も強い活動期と、炎症が治まり、症状のほとんどない寛解期を繰り返すことが多い病気です。しかし、適切に治療することによって、ほとんどの方は寛解を長期に維持して普通の日常生活を送ることができます。

潰瘍性大腸炎の治療は、まず寛解へ導くための寛解導入療法を行い、寛解が得られたら、次はその状態を長く保つための寛解維持療法を行います。

寛解維持療法の基本薬は5-ASA製剤です。5-ASA製剤には大腸の炎症を抑える効果があり、服用を続けることによって80%以上の方は良好な状態を保つことができます。難治例の場合は免疫調節薬を使用することもあります。
また、寛解導入療法で抗TNF-α抗体製剤(生物学的製剤:バイオ医薬品)を使用した方の場合は、寛解維持療法でも同じ薬を使用します。

寛解維持療法をきちんと続けると再燃を避けられる

寛解維持療法は良好な状態を保つための大切な治療です。ところが、寛解導入療法によって症状が消えると、「また症状が悪くなったら来ます」といって、治療を中断しようとする方がときどきいます。それは大きな間違いで、腸の炎症が治まっても病気が治ったわけではなく、薬をやめてしまうとやがて潰瘍性大腸炎が再燃します。

再燃しても治療を再開すれば症状はよくなりますが、このようなことを繰り返していると、病気が悪化して寛解が得られにくくなっていくのです。
薬をきちんと飲み続けた方と、薬の中断と再燃を繰り返した方では、1~2年後の状態に大きな差が出ることは臨床研究でも明らかです。薬の中断と再燃を繰り返すうちに、病気が急に重症化して入院が必要になることもあるのです。

症状がないのに病院に通い薬を飲み続けることについて、時間やお金がもったいないと感じることがあるのかもしれません。しかし、もしも悪化して入院することになってしまったら、もっと大きな時間とお金を費やすことになります。

再燃を繰り返して寛解が得られにくくなると、仕事や家庭生活にも支障を来たしますから、定期的な受診と治療の継続で病気をうまくコントロールしていきましょう。

潰瘍性大腸炎の方はストレスに注意を

「潰瘍性大腸炎は、
ストレスによって症
状が悪化しやすいこ
とがわかっています」

IBDのうちでも、とくに潰瘍性大腸炎はストレスの影響を受けやすいことがわかっています。たとえば、転職や引っ越しなどによる環境の変化、大切な人との死別や離婚などは大きなストレスになります。また、仕事をもっている方のなかには、年度末から年度初めなど多忙な時期に決まって腸の状態が悪くなるという方もいます。

大きなライフイベントがあったときや、仕事が忙しいときなどは、ついそちらを優先してしまいたくなりますが、そんな時期こそ、時間をやりくりして定期受診を欠かさないようにしましょう。

寛解が維持できていれば好きなものを食べてOK

潰瘍性大腸炎の方でしたら、寛解期にはとくに食事の制限はありません
野菜はもちろん、カレーなど香辛料を使った料理や、アルコールも摂りすぎなければ普通に食べられます。
食生活で苦労されている方も少なくないと思いますが、腸の状態が良好に保たれていれば、食べ物をよく噛んで食べることや、暴飲暴食を避けるなど、誰にでも当てはまる健康的な食べ方を心がけるだけで十分です。

多少失敗しても次から気をつければよく、このくらいまでなら大丈夫という自分なりの範囲がわかって食事の調節がしやすくなる、と前向きな気持ちをもちましょう。
病気がコントロールできて食事のストレスから解放されると、腸の状態が安定して長期の寛解維持に結びつきます。

朝方の腸の状態に注意。血便や粘液はすぐに病院へ!!

それでも、一時的に腸の状態が不安定になることはあります。
潰瘍性大腸炎の方に、注意していただきたいのは、朝方の腹痛や下痢です。普通の下痢なら数日様子をみても問題ありませんが、血便や粘液の混じった便がみられたら、通院している病院にできるだけ早く連絡をし、次回の診察予定日を待たずに、受診するようにしましょう。

このようなときに、遠慮して様子をみようと思ったり、忙しいからと用事を優先するのは禁物です。早く適切に対処すれば、多くの場合、大事に至らずにすみます。

主治医と定期的に顔を合わせることが大切

診察室に患者さんが入ってきて顔を見た瞬間、その方の調子がいいかどうかすぐにわかります。それは、長年その方と定期的に顔を合わせているからです。
いつもと違うなと思ったら、患者さんには少し掘り下げた質問をしてみます。するとほとんどのケースで気になる点が見つかるものです。

前述した通り、寛解維持療法を行っていても腸の状態が不安定になることはあります。
定期的な診察には、そのような変化に早く気付き、悪くなりかけたときすぐに対応して再燃を防ぐという意味もあるのです。
小さな変化を見逃さず、そのつど対処することによって、毎日を活動的に過ごし、それぞれの方にとって、よい人生を送ることができます。

患者さんからも主治医に積極的に質問や相談を

みなさんは、ご自身の病気について、日頃から気になっていることや疑問があるのではないでしょうか。
せっかく定期的に受診しているのですから、小さなことでも主治医に聞いてみましょう。症状のことだけでなく、日常生活に関することや将来のことでも構いません。

主治医への質問は、病気に対する理解を深めるのに役立ちます。IBDの治療には、患者さんがご自身の病気について十分に理解し、治療方針の決定にも積極的にかかわるという「アドヒアランス」が欠かせませんが、小さな疑問を解決することがそのための第一歩になるのです。

※アドヒアランスとは、治療方針の決定について、患者さん自身が積極的に参加し、その決定に沿って治療を受けることである。 患者さんが自身の病気を理解し、治療に対しても主体的に関わることで、より高い治療効果が期待できます。

次回はクローン病の寛解維持療法について鈴木康夫先生にうかがいます。